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唯一無二の福島体験をレポート。伝統と自然に心が震える、二泊三日の贅沢旅

福島は、山の景色と清らかな水、そして温かな人の営みが息づく土地です。二泊三日の行程では、その豊かさを少しずつ味わいながら進みます。川俣シルクの繊細な織物、土湯のこけしや高湯の温泉、地元の米と水から生まれる日本酒、そして心をほぐす郷土料理。いずれも土地に根づいた文化であり、ここに来なければ出会えない体験です。本記事では、その一例となるプランをレポートします。
移動は専用のバンタクシーで快適に。少人数だからこそスケジュールには余白があり、土地の空気にゆっくりと触れることができます。さらに、参加される方の希望に応じて柔軟なアレンジも可能です。観光地を巡るだけではない、福島で過ごす穏やかで贅沢な時間に思いを馳せてください。
旅への期待に胸が高鳴る。はじまりは「からりこ館」へ向かう道中から

旅の幕開けは、貸切タクシーの車内で参考映像を眺めながら。川俣の歴史やシルクの魅力を知った後に訪れるのは、道の駅川俣に隣接する「かわまたおりもの展示館・からりこ館」です。ここでは織り機の歴史を伝える展示や養蚕から絹織物に至るまでの過程を学ぶことができます。木の温もりある空間に並ぶ展示品や手織り体験の場は、旅の最初にふさわしい導入として心をわくわくさせます。
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ホームページ:https://www.tif.ne.jp/jp/entry/article.html?spot=5987
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1日目 体験・ワークショップ|齋栄織物株式会社(川俣)

世界最薄クラスの絹織物「フェアリー・フェザー」を生み出した、川俣シルクの現場を見学します。フロアに整然と並ぶ織機が一定のリズムで動き、カンカタンという音が空間を満たします。糸づくりから織り、検反までの工程は丁寧で、膨大なたて糸を一筋ずつ通すような繊細な手仕事にも触れられます。工場には自動織機やレピア織機をはじめ多くの設備が稼働しており、技術の厚みを体感できます。フェアリー・フェザーは日本のデザイン賞や技術賞にも選ばれ、海外ブランドにも採用が広がっています。見学後は、同じ建物内のモデルルームで製品を手に取り、ショッピングもお楽しみいただけます。
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ホームページ:https://www.saiei-orimono.com/(英語ページあり) 住所:〒960-1406 福島県伊達郡川俣町鶴沢馬場6-1 電話:024-565-2331(代表)
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1日目 宿泊エリア|飯坂温泉エリアの楽しみ(福島市)

摺上川の流れに沿って広がる飯坂温泉は、石畳と湯けむりが織りなす情緒豊かな温泉街です。町の中心には、江戸時代の豪商の屋敷を整備した旧堀切邸があり、土蔵造りの建物と四季折々の庭園が旅人を迎えます。少し歩けば、伝統の共同浴場「鯖湖湯」が湯けむりを立ちのぼらせ、熱めの湯に身を沈めると体の芯から温まります。町には八つの共同浴場が点在し、湯めぐりをすればそれぞれの湯の個性に出会えます。
また、片岡鶴太郎美術庭園では、色彩豊かな作品と静かな庭の景観が心を落ち着かせてくれます。夜には浴衣姿で石畳をそぞろ歩き、軒先の灯りや川のせせらぎに耳を澄ませば、時がゆったりと流れていきます。飯坂温泉は、観光と芸術、そして暮らしに根づいた温泉文化がひとつに溶け合う、滞在そのものが思い出となる町です。
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飯坂温泉観光協会 旧堀切邸 鯖湖湯(共同浴場) |
1日目 宿泊|飯坂温泉 なかむらや旅館(福島市・飯坂)

木のぬくもりを残す土蔵造りに一歩足を踏み入れると、江戸から明治へと続く時間の流れがふっと立ち上がります。元禄元年(1688年)創業の歴史を受け継ぐこの宿は、わずか3〜4組だけを迎える贅沢な空間。館内には希少な「なまこ壁」が今も残り、古きよき日本の建築美が息づいています。

湯は100%源泉かけ流し。かつて鯖湖湯で使われていた寒水石を配した浴場「與右衛門の湯」では、やわらかな湯あたりと石の風合いが織りなす独特の趣を味わえます。夕食には地元の旬を取り入れた会席が並び、翌朝は飯坂名物「ラヂウム玉子」がそっと添えられた朝膳に心が和みます。時代の記憶と現代の快適さが調和した、特別な一夜を過ごせる宿です。

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ホームページ:https://iizaka-nakamuraya.com/
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2日目 体験・ワークショップ|染織工房おりをり(福島市・飯坂)

澄んだ朝の光が差し込む古民家に、里山の空気が静かに流れる工房おりをり。主宰の鈴木美佐子さんが迎えるのは、蚕が命を糸へと変える営みを、体験として味わうひとときです。生繭から抽出される保湿成分セリシンを使った生化粧水づくり、真綿づくり、養蚕の作業、そして草木や藍の染め体験など、幅広いワークショップが揃っています。

すべての体験は少人数制で行われるため、アットホームな雰囲気の中でじっくりと学ぶことができます。隣接する「ギャラリー納屋」には織り機が設置され、糸を織る感触を実際に味わえるのも魅力です。絹が生まれる瞬間から布として形になる過程までを、手を動かしながら理解できる特別な時間は、旅の思い出を豊かに彩ります。

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ホームページ:https://someori-kobo-oriwori.jimdofree.com/
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2日目 宿泊|高湯温泉 安達屋(福島市・高湯)

霧に包まれた山間に佇む高湯温泉。硫黄の香りをまとう乳白色の湯が、まるで肌に溶け込むかのように染み渡ります。ここ、安達屋は400年以上の歴史を受け継ぎながらも、大人だけを迎える大人の隠れ家として洗練を極めています。広々とした露天風呂「大気の湯」は源泉かけ流し。星空を仰ぎつつ湯面と一体になる静かな時が、ここにしかない特別な寛ぎをもたらします。貸切風呂「薬師の湯」や「ひめさゆり」も自由にご利用いただけ、プライベートな癒しの時間を存分に味わえます(混浴は女性専用時間あり)。

館内には趣異なる2つのラウンジがあり、旅の合間にはその時々に合わせて寛ぎのスタイルを選べます。古風な囲炉裏を中心にしたロビーラウンジでは、しんとした灯りの中で静かに語らう贅沢さ。モダンな雰囲気のラウンジ「Hêtre」では、15時からのアペリティフや夜のバータイムにスパークリングワイン、ビール、ウイスキー、ワインとともに軽いおつまみが無料で楽しめます。このサービスは、安達屋ならではの上質なおもてなしです。

夕食はすべて囲炉裏を備えた個室または半個室で。炭火が火を通すのは山の幸や川の幸——素材の香りと旨みが立ち上り、五感すべてに響きます。朝はその余韻を抱えたまま、しっかりとした朝膳をいただき、静かな山の朝に心を整える。安達屋は、伝統と現代的な寛ぎをゆるやかに融和させた、一泊では終わらない深い体験を提供する宿です。
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ホームページ:https://www.adachiya.jp/
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3日目 体験・ワークショップ|まつや物産店(土湯温泉)

柔らかい朝の光に包まれた土湯温泉。ここで訪れていただくのは、まつや物産店という温かな空気が漂う物産店です。店内には土湯こけしの工房が併設され、職人たちが黙々と削り、磨き、顔と模様を描く工程を静かに見守ることができます。

その後、自分だけのこけしに絵付けする時間が始まります。くじら目や三日月眉、おちょぼ口といった土湯こけしの特徴を学びながら、筆を握る手には自然と集中が宿ります。完成した作品はそのまま持ち帰りができるので、旅の思い出が手に残るかたちになります。さらに店舗の横には手湯があり、温泉街らしい風情を感じながら、ほっと一息つけるのも嬉しいところです。参加者全員が笑顔になる、素朴で愛らしいクラフト体験です。
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ホームページ:公式ページなしですが、観光情報によく掲載されています
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3日目 ランチ|ゆず沢の茶屋(福島市・荒井)

静かな山あいに佇む「ゆず沢の茶屋」は、まるで森の中に現れる隠れ家のようです。藍染めののれんをくぐれば、木の香りただよう板の間、囲炉裏のはぜる音、墨絵が並ぶ小画廊のような空間が広がります。まごころを込めた郷土の温もりが、訪れるすべての人を迎えてくれます。
人気の「ゆず定食」は、柚子味噌焼きおにぎりやとん汁、煮物、寄せ豆腐が並ぶ品々で、素朴ながらも心に染みる満足感を与えてくれます。山里の味を楽しみながら、心も体もほどけていくひとときです。
外に出れば、cafe YAMATOで豊かな香りのコーヒーを静かに味わえるのも嬉しい余韻です。山里ならではの食と景色を、ゆったりと味わう最後の時間です。
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ホームページ:http://yuzusawanochaya.sakura.ne.jp/
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3日目 体験・ワークショップ|金水晶酒造 四季の蔵(福島市・荒井)

静寂が包み込む新しい蔵の中で、日本酒の命がゆっくりと育まれる様子を感じられます。1895年創業、福島市唯一の酒蔵として120年以上続いてきた金水晶酒造。その蔵は2024年3月、松川から荒井の「あづま四季の里」隣に移転し、澄んだ伏流水と地元酒米だけで酒を造る新たな息吹が吹き込まれました。
訪れるとまず、蔵人の案内で最新設備による酒造りの工程を見学します。硬度の高い荒川の伏流水がすっきりと香る酒を醸しだし、造り続ける姿勢には創業以来変わらぬ「品質第一」の矜持が宿ります。そして試飲スペースでは、ご自身の舌でその酒を味わい、その繊細な香りと味わいを体感できます。直売所では地元の酒やオリジナルグッズ、酒粕アイスなども揃い、町と蔵が一体となって醸す文化を全身で楽しめます。
この体験は、日本酒の製造現場を単に訪れるだけでなく、土地の水、米、人が紡いできた物語に向き合う時間でもあります。旅の締めくくりに、ゆったりとした余韻を残すひとときです。
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ホームページ:https://www.kinsuisho.com/
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二泊三日の旅を終えて心に残るのは、福島という土地が持つ豊かさそのものです。絹を織り上げる匠の技に驚き、こけしの表情を描く楽しさに微笑み、日本酒の奥深い香りに包まれる。そして湯けむりと郷土料理に癒やされながら、自然と文化がひとつに息づく瞬間を体感します。
ここで触れる体験は、単なる観光ではなく、土地の歴史と暮らしを映し出すものです。その積み重ねが、福島で過ごす時間をかけがえのないものにしています。心を解きほぐし、深い余韻を残すこの旅は、他のどこでも得られない「心が震える価値」として、長く記憶に刻まれていくでしょう。

