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FASHION

産地の学校 × ベンベルグ 第3回

 

<ベンベルグ>ラボ第3講

-「ベンベルグ裏地ミュージアム&ベンベルグアウター素材展視察」開講!-

 

 

繊維・アパレル産業に携わる優秀な人材の発掘と育成、産地が抱える課題へのプロジェクト支援など、繊維産業の活性化に向けて様々な取り組みをおこなっている「産地の学校」。主催する(株)糸偏・代表の宮浦晋哉氏の活動に感銘を受けた(株)旭化成の全面協力のもと、共同プロジェクトとしてスタートしたプログラム” 産地の学校 Bemberg®Lab”の3回目の講義「ベンベルグ裏地ミュージアム&ベンベルグアウター素材展視察」が行われました。

 

 

前回のおさらい

 

会場を馬喰町の産地の学校から神保町の日本ファッション協議会ビルに移して行われた前回の講義。前半は、宿題として出されたベンベルグの市場調査報告会が行われ、受講生たちからは様々な調査結果(前回のページリンク貼り付けお願いします…)がもたらされました。その後も、旭化成がシーズンごとに作成する素材開発マップの説明、日本が誇る繊維産地の解説、そしてベンベルグを用 いたアウター製品の紹介など、普段知り得ることのできないマニアックなお話のオンパレード。あらためて繊維産地やものづくりへの興味が増すと共に、<ベンベルグ>の新たな可能性をかんがみる、貴重な学びの時間となりました。そして今回は教室を抜け出して、新たな学びを体験します!

 

 

第一部裏地ミュージアム視察 —マニアックの殿堂!?<ベンベルグ>裏地博物館を視察—

 

 

11月15日(木曜)、3回目の講義は、東京ミッドタウン日比谷(旭化成本社内)にリニューアル・オープンしたばかりの「ベンベルグ裏地ミュージアム+(プラス)」の視察からスタートです。この施設は ”旭化成の創業以来、脈々と受け継がれて来た「ベンベルグ」裏地の歴史と伝統を振り返りつつ、現在の姿を通して裏地の未来を考える場”として2014年に千代田区神保町にあった旧旭化成本社に開設。本年11月の本社移転にともない、日比谷に移って来ました。今回ラボ受講生は、3班に分かれてこちらの施設を順次見学し、ベンベルグの歩みを勉強していきます。

 

12時50分。東京ミッドタウン日比谷9階のロビーに集合。入館用ICカードを受け取り、いざオフィスフロアへ。旭化成本社29階のエントランスを入ってまず驚かされるのが、フロアを囲む大きな窓から望む抜群の展望! 隣接する皇居や日比谷公園、ペニンシュラホテルはもちろん、遥か関東山地までの関東一円が眼下に広がる大パノラマでした。フロア中央には広々とした受付があり、その横には待合スペースのほか、旭化成グループが開発するコア技術の数々が展示されたスペースもあります。こんな素晴らしい環境でわたしも仕事ができるようになりたいと、受講生がつぶやいておりました。ゆるやかにらせんを描く内階段をのぼり、いよいよ30階のベンベルグ裏地ミュージアム+(プラス)に入館です。

 

 

 

 

 

ミュージアム+は、博物館や美術館といった厳かな館をイメージしていましたが、どちらかといえば室内という表現が当てはまるシンプル&コンパクトなプレミアムスペースでした。「こちらが11月より新たにオープンしましたベンベルグ裏地ミュージアム+です。ここでは個別の商談や、ベンベルグについての勉強などをしてもらうことができます(要予約制)。是非みなさんにも、ここで勉強したことをビジネスの糧にしてもらいたいと思います。」旭化成繊維事業本部の瀬戸良成氏の挨拶から講義は始まりました。

 

 

続いて、旭化成マーケッティング室の前田舞子氏から裏地ミュージアムについての説明。「この裏地ミュージアムは本社移転前の神保町で2014年に開設しました。それまでは表地と共に毎シーズン展示会を開催していましたが、裏地という商材の特性を考慮した結果、もっとお客様と密に話し合える機会の場を設けるため、このような常設展になりました。開設以来、約4,500名を超えるお客様にご来場をいただき、新たな素材の開発や、ベンベルグを深く知っていただく場所として使っていおります。」

 

 

 

百聞は一見にしかず —ミュージアムでしか知りえない貴重な体験の数々!—

 

 

挨拶が終わり、次にベンベルグの基本機能(吸放湿性・滑り・制電性)の解説動画と、イタリアの高級スーツブランド・キートンと製作したプロモーション動画を視聴。内容はもちろんですが、この映像を映し出す最新のデジタル機器に、受講生もおもわず感嘆の声をあげるほどの充実ぶりでした。

 

次に「ベンベルグ」の歴史と生産背景を紹介です。1931年に日本で初めてベンベルグが製造されて今年で87年になるとのこと。また、1953年に業界初となるチョップ制度(旭化成の品質保証制度)導入の話、ベンベルグの販促テレビCMの紹介など、今日までに及ぶベンベルグ裏地の歩みを詳しく解説していただきました。

 

残念ながら撮影はNGでしたがミュージアムの入り口には、延岡ベンベルグ工場で実際に動いている紡糸機と巻き取り機の模型が展示されています。その機器で紡がれた原糸も触らせていただきました。ほんとうに柔らかくて軽く脆い。デリケートな繊維だとあらためて実感しました。

 

そのほか、民族衣装や高機能インナーなど、アウターとしての新たな製品紹介や、ポリエステルとの吸水性を比較した検証実験、ジャケットの着用体験などを行いました。実際に着用した受講生からは「すべりが全然違う」「軽い」「動きやすい」などの感想が。自分の目で見て肌で感じることで、より一層ベンベルグの機能性に魅せられた様子です。

 

こうした「ベンベルグ」の歴史や技術とともに、サステナビリティーに関する取り組みも多く知ることができて、視察時間が足りなくなるほど充実した視察となりました。このベンベルグミュージアム+ではおよそ600品番、約3000種類のベンベルグ裏地が所蔵され、アパレル企業や問屋さんもそのすべてを見ることができるとのこと。もちろん服飾専門学校の学生も見ることができるので、ぜひこの貴重な経験をしに訪れてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

第二部 アウター素材展視察 —答えは現場に落ちている。ここが素材の最前線だ!—

 

 

 

ミュージアム+の視察終了後、続いて恵比寿ガーデンルームで行われている2019 Autumn & Winter <ベンベルグ>アウター素材展示会に訪れました。

 

ベンベルグを用いた新作アウター素材が一堂に会す場とあって、日本全国から42社のコンバーターが参加(中国からも1社参加)。多くのアパレル関係者が来場し大盛況です。実際に商談もおこなわれているリアルな現場ですが、今回は<ベンベルグ>ラボの受講生たちのために、特別に見学することができました。

 

展示会場内は、シーズンテーマや製品ごとのブースで空間が仕切られ、会場を覆うようにずらりと各社のスワッチが並んでいます。この会場に並べられたすべてに<ベンベルグ>が用いられているという事実にまず驚愕です。受講生たちもさぞ張り詰めた様子かと思いきや、”SNSに#bembergを付けてアップすると靴下プレゼント!”というサービスに早速飛びついて盛り上がっていました。

 

 

 

“エクスペリエンス ベンベルグ” —学びは続くよどこまでも—

 

“Experience Bemberg”をコンセプトに開催されていた今回のアウター素材展。「シーズンテーマは「Comfy Wool」「80’s inspired」「Play full」「Feel Sustainability」です。そのまわりに、ジャージ・ニットやコート・ジャケットなどアイテムごとにブースを分けて展示しています。」と旭化成の中村典子さん。展示されている素材の具体的な特徴とともに、*ベルティーン・エボや*ノンミュールジングウールといった環境に配慮した最新素材の開発状況を、海外での傾向を踏まえて教えていただきました。

 

*ベンベルグを細かく起毛させ、光沢を抑えるサンドウォッシュ加工は現在世界的な人気を誇っている。その加工プロセスを改良し、より環境に配慮した最新のサスティナブルな加工。

*世界で倫理的に問題となっているミュールジング(=ウールをより効率よく刈り取るために羊に施す特殊な処置)に対し、この行為を行わず自然のままに飼育、生産されたウール。

 

16時30分、ひととおりの説明が終わり、本日の講義はここで終了し自由解散。熱心な受講生達はその後もスワッチを一つ一つ丁寧に見て回っていました。最新の素材に触れる機会を得て、また多くの学びがあったのではないでしょうか。

 

なにより、前回のラボでみせていただいた素材開発マップが、最終的にこのような形で展示会に反映され、製品となり多くの来場者にお披露目される。企画から製品になるまでの途方もない工程をほんの少しですがうかがい知ることができて、ある種の感動すら覚えた第3回目の講義でした。

 

 

 

旭化成・中国未来の星デザインイノベーション大賞

 

2018年5月にスタートした、「旭化成・中国未来の星デザインイノベーション大賞」。中国の学生たちが「Precious&Relax」というテーマに沿って『ファッショントレンドプラン』を製作し、プレゼンテーションを行いました。 <ベンベルグ>を使用した美しい生地と中国のデザイナーの才能がどのように出会い、作品が生み出されるのか、注目が集まったこのプロジェクトでのファイナリスト3名の展示が行われ、ドレープ性や発色性を理解した<ベンベルグ>の魅力が引き出されたデザインに受講生達は作品に触れ、隅々まで研究していました。

 

 

 

視察を終えての感想

 

ベンベルグ裏地ミュージアム+とアウター素材展を終えて、受講生や関係者の方々に感想をうかがいました。

 

 

<主催 産地の学校 宮浦晋哉氏>

以前から<ベンベルグ>アウター展が日本で一番面白い展示会だと感じていたのですが、本当にその通りでした。キュプラを通して、全国の産地の技術がここに集結していて、それを見ることができることがまず素晴らしい。そして素材のクオリティーはもちろんですが、実験的な試みも行われていて勉強になります。さらに、部屋着のパジャマから、ドレス、フォーマルなジャケットまで幅広くベンベルグが用いられているという事実も忘れてはいけないですよね。世界の流れもエコやサステナビリティーの方向に加速しているので、ますます今後が面白くなるなと実感しています。

 

 

<旭化成マーケティング室室長 近野哲>

今回のアウター素材展は、”エクスペリエンス ベンベルグ”という名のもと、実際にベンベルグを触って体感してもらうということが大きなコンセプトになっています。全国津々浦々の産地、そして中国からも最新のラインナップを出展していただいて、とても充実した展示会になりました。

 

 

<受講生の声>

ベンベルグ裏地ミュージアム+はすごく勉強になりました。普段知ることのできないことが、いろいろな説明を受けて理解できたので今後に生かしていきたいです。(福田さん・会社員)

 

服を見るときに素材についてそこまで意識してこなかったんですが、視察を通してとても興味を持ちました。今後は洋服を見るときに、キュプラがどんな使われ方をしているのかを意識して見てみようと思います。(伊藤さん・学生)

 

裏地ミュージアム+が神保町にあった時から行ってみたかったのですが、誰でも行ける場所ではないと思っていたので、今回<ベンベルグ>ラボという機会に恵まれて見ることができてよかったです。普段服を作っているので、ベンベルグを知れば知るほど使いたという欲求は高まるのですが、価格とのバランスが難しいという現実との葛藤を繰り返しています。(鈴木(い)・フリーランス)

 

店頭でもキュプラを見る機会は多いのですが、今回のアウター素材展ではいろいろなバリエーションが見ることができて、実際に欲しいと思う生地もありました。(アウターとして)こんなに多くの雰囲気が出せるのかと勉強になりました。(宮地さん・会社員)

 

混率の考え方や、再生繊維のレーヨンやビスコースとキュプラを混ぜることの意味を知ることができたのが面白かったです。(宿谷さん・フリーランス)

 

ミュージアム+は移転前の神保町に行ったことがありましたが、今回とても綺麗になっていたのが印象的です。また、旭化成が繊維以外にも多くの事業を展開していることを知ることができたのもよかった。<ベンベルグ>の展示会は初めてだったのですが、裏地のイメージが強かったので、アウターとしてもいろいろ見ることができて新鮮でした。(大場さん・学生)

 

キュプラ100%だとできないことも、ウールやポリ、綿などと混紡することで洗いが可能になるなど、工夫の仕方によって新しい可能性が生まれることを今回の視察を通して知ることができました。(森口さん・学生)