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FASHION

産地の学校 × ベンベルグ 第2回

 

ベンベルグ®ラボ第2弾

-ベンベルグ®アウター(裏地)の商品開発の裏側に迫る-

 

 

繊維・アパレル産業に携わる優秀な人材の発掘と育成、産地が抱える課題へのプロジェクト支援など、繊維産業の活性化に向けて様々な取り組みをおこなっている「産地の学校」。主催する(株)糸偏・代表の宮浦晋哉氏の活動に感銘を受け、(株)旭化成の全面協力のもと、共同プロジェクトとしてスタートしたプログラム” 産地の学校 Bemberg®Lab”の2回目の講義「<ベンベルグ>アウター(表地)の商品開発」が行われました。

 

前回の講義前半は、学生やデザイナー、社会人など様々な背景をもつ受講生15人がお互いの自己紹介と親睦を兼ねたオリエンテーションを行いました。後半ではこのプログラムの主題である<ベンベルグ>の概要をわかりやすく解説。最後に<ベンベルグ>が売り場でどのように展開しているのかを調べる、市場調査の宿題が課されて初回は終了しました。 宿題というと、反射的に学生時代の連日の課題、夏休み終盤の絶望的な追い込みを連想させ肩に力が入りそうですが、本気で繊維と向き合う彼らにとってはむしろ望むところだったのではないでしょうか。どのような報告が集まるのか楽しみです。

 

 

市場リサーチ報告会—好奇心に限界はない!若きベンベルガーたちの挑戦がはじまるー

 

11月10日(土曜)、第2回目の講義は、神保町の日本ファッション協会に場所を移して行われました。司会進行は宮浦氏。さらに旭化成繊維事業本部の入江桂子氏が講師を務めます。 「前回の講義からあっという間に約1ヶ月が過ぎましたね。この間、みなさんには<ベンベルグ>が店頭でどのように展開されているのか、市場リサーチをお願いしました。今回はその報告会からやっていきたいと思います。では実際に店舗で見てきた人は手を小さく上げてください」。宮浦氏の控えめな呼びかけに、半数くらいが慎ましく手を挙げていたでしょうか。(挙げられなかったのは店舗以外でリサーチしたからだったようです。結局全員がしっかりと宿題に向き合っていました)。顔を見合わせ、受講生から笑いがもれたところで報告会がはじまりました。

 

 

 

<受講生たちによるリサーチ報告1>

・新宿伊勢丹に行ってきました。袖裏がキュプラ100%で、見頃の裏はキュプラ55%にコットンを混ぜるなど、部分によって混率を使い分けていました。 (袖は袖通しがいいようにキュプラ100%を使用して滑らかさを重視。背中は冷やさないために、単繊維との交織で温かさをプラスする仕様が秋冬ものには多いとの解説がありました。)

 

・某有名ブランドの店舗にてリサーチ。ジャケットの裏地だけではなく、部分的な装飾としても使われていた。 (ポケットだけなど生地屋さんにとっては泣きたくなるような仕様もあるのですが、影響力を持つブランドが使ってくれることで<ベンベルグ>の知名度も上がるという効果もあるとの解説)

 

・ふとん屋さんに行ってきました。ふとんの裏地がキュプラ100%。同店で販売されていたルームウエアのガウンの裏地にも使用されていた。

 

・古着屋さんに行ってきが、キュプラは見つけられませんでした。

 

などの店舗報告が寄せられました。

また、独自のリサーチをしてきた受講生からも興味深い報告が続出します。

 

 

 

<受講生たちによるリサーチ報告2>

・今日は以前購入した、裏地にキュプラが使われているコートを着てきました。 (図らずももう一人同じブランドのジャケットを持参した受講生が。製品タグにそのアイテムの生産地を銘記するという、国産ブランドの粋なとり組みに、会場にいた全員が思わず唸りました。)

 

・産地の学校の授業で富士吉田に工場見学に行きました。経糸にキュプラ、緯糸にウールを打ってストールを作り、織りあがったばかりの「生機(きばた)」から、洗いのかけ方を変えることでどんな違いがでるのか勉強してきました。

 

このほか、数あるECサイトをリサーチして、和装の下着や品質管理用の手袋、医療用ガーゼなど、多岐にわたり用いられるキュプラの機能性を深掘り。その結果をスライドで発表するツワモノも。旭化成の入江氏からは、キュプラの意外な使われ方、業界うら話などの貴重なお話をうかがうことができました。まさに受講者と開発者が双方で意見を出し合い、多角的な視点でテーマを捉える。ベンベルグラボならではの強みが発揮された報告会となりました。

 

 

 

開発マップの紹介—汗と涙の結晶をみよ!これが門外不出の開発マップだー

 

 

続いての講義は、旭化成繊維事業本部マーケティング室から入江桂子氏による実際に旭化成で使われている生地開発マップの紹介です。 「この開発マップは、日本の各産地を回り、機屋さんと次のベンベルグ展(生地展)に向けてどのような生地を作るか話し合うためのものです。春夏と秋冬の年2回、シーズンが始まる前に作ります。最新のトレンドを踏まえ、いまどのような生地が必要とされているのか。また、その生地を作るために我々がどんな糸を開発しているのか、といった要点をここにまとめています。機屋さんによっては、繊維組織をよく分かっていても色が分からないなど得意不得意が当然あるので、全体のトレンドを知ってもらうためにもこのようなマップが必要となるんです。」と入江氏。毎シーズン多くの情報を精査し、開発マップにまとめるだけでも大変な作業ですが、さらに全国の工場をひとつひとつ回り話し合いを重ねるという、旭化成のものづくりに対する真摯な取り組みがよく伝わるお話でした。

 

その後、講義は日本各地の産地紹介に移ります。産地別にスワッチを見比べながらその地域の特徴をわかりやすく教えていただきました。受講生も興味津々の様子で話に聞き入っていました。

 

 

<紹介された主な産地と工場>

 

兵庫県 / (株)丸萬

綿の産地である兵庫県西脇にある(株)丸萬。<ベンベルグ>の短繊維を取り扱う唯一の会社であるとのこと。

 

 

滋賀県 / 志賀麻工業(株)

滋賀県は麻織物の特産地。海外のブランドやブライダルブランドなども手掛ける志賀麻工業(株)の麻について解説。<ベンベルグ>の柔らかさと麻のシャリ感が混ざることで、互いの良さを引き立て合うことができるとの説明がありました。

 

 

新潟県 / 新潟テキスタイル、(株)渡兼

新潟県は、特徴のある工場が県の南から北まで広く点在する珍しい土地柄。新潟市にある新潟テキスタイルはバランスよく多くの生地を手掛けているとのこと。県南の長岡市栃尾にある(株)渡兼のドビー織なども紹介され、ドビーとジャカードの見分け方の説明もありました。

 

 

群馬県桐生市 / ミワ(株)

歴史ある絹織物、桐生織の生産地である桐生。ミワ(株)は、奇抜なジャカード柄を作ることで世界的に知られているとのこと。(株)ミタショーのジャカードも紹介されました。また、桐生はカットジャカードに用いられるカットの技術が高いことでも有名だとか。

 

 

山形県米沢市 / 青分テキスタイル(株)

米沢はいま二代目の若い世代が頑張っている活気ある産地。青分テキスタイルのこだわったもの作りが象徴的だとか。桐生と同じくジャカードに強い産地として知られているが、最近はドビー織にも力を入れているとのこと。

 

 

山梨県富士吉田 / フジチギラ(株)

山梨は<ベンベルグ>の裏地を主に製造することが多いが、フジチギラ(株)では<ベンベルグ>を使ったアウター向けの生地も扱っている。山梨でもトレンドを受けて、チェックやストライプなどのドビー織の生産が多くなっている。

 

 

福井県 / 田中商店、富田商事、ひかり商事

後染めの産地が多いのが特徴の北陸地域。福井県の田中商店のサンプル生地は、トロンとした落ち感がまさにベンベルグといった印象。同じく福井の富田商事のファインフェラメント、ひかり商事のリバティプリントなどが紹介されました。

 

ここまでであっという間の前半終了。 時の経つのを忘れるほどの内容の濃さ。会場にいた全員が、全身から湯気が出るほど熱く集中していたのではないでしょうか。しかし休憩時間にも関わらず受講生たちは休みません。時間を惜しんでスワッチに触れながら、ラボメンや技術者との繊維トークに花を咲かせていました。そのモチベーションの高さと熱量に、日本繊維業界のこれからを感じさせました。

 

 

 

第二部—ギュギュッとさらに濃縮濃密な後半戦—

 

 

後半は編み物の産地についての講義からスタートしました。パリの国際的なテキスタイル見本市プルミエール・ヴィジョンで昨年、大賞を獲得した和歌山県の(株)エイガールズを始め、ウールの産地である尾州(愛知県)のニットメーカー中伝毛織(株)や宮田毛織工業(株)。さらに京都でも高い技術で知られる染色工場(有)久山染工の特殊織物についての解説をしていただきました。

 

 

「こういった各メーカーさんが作る生地見本が生地展に集められて、アパレル業界の方々にお披露目されます。そこで評価の高い生地をピックアップしてもらい、その数を集計する。マップ作りから集計まで、これが我々繊維メーカーの過ごす6ヶ月間のおおまかな流れとなります」。その集計をもとに、また次のシーズンのマップ作りが始まるとのこと。入江氏がふと「だから一年がほんとあっという間…」と小声でこぼしていたのもしっかり聴取らせていただきました。しかしなにより、本来公開されることのない開発マップを拝見できたことは、受講生にとって貴重な経験になったのではないでしょうか。

 

 

 

海外の製品紹介 —まだまだ続くマニアックな繊維話!ついてきてるかベンベルガー—

 

第2部中盤はいよいよ今日の本題である「ベンベルグアウター(表地)の商品開発」についてです。裏地に使われているイメージが強いキュプラですが、アウターとしての生地開発も当然ながら進められています。講義では、実際に製品となったドレスやジャケット、スカートなど、海外ブランドの製品サンプルの仕様を確認。キュプラビスコースのドレスやソフトデニムといったキュプラの特性を生かし、他繊維と混ぜ合わせた複合素材が多く紹介されました。特に海外で人気が高いのは、サンドウォッシュ加工を施しヴィンテージ感のある風合いをだしたものだそうです。

 

 

終盤では、改めて<ベンベルグ>がコットンの種子から糸に、そして生地になる工程をおさらい。また、サスティナビリティについて説明するために製作した、4週間土に埋めて生分解を進めたロングドレスが登場。土に埋めた部分が茶色く変色し、まさに土に還る一歩手前の状態でした。このドレスに受講生がこの日1番の盛り上がりをみせ、今日の講義は終了となりました。

 

 

 

一般的な感覚では、まず表面的なデザインにばかり目がいき、素材は二の次になりがちです。しかし繊維を知り、素材を通してデザインを捉え直すと、洋服の見え方が驚くほど一変します。今回の講義を通して、洋服の奥深さを再認識するとともに、<ベンベルグ>への好奇心がまた増した気がしました。

 

 

 

第2回講義終了後、受講生や関係者の方々に感想をうかがいました。

 

<主催 産地の学校 宮浦晋哉氏>

・まだ初回の講義からわずか1ヶ月しか経過していないのに、若い学生から「短繊維のほうが吸水性はいいのですか?」といったマニアックな質問がでてきた。そうやって興味を持って自分から学んでいく、まさに産地の学校のいい側面が出ているなと感じました。(宮浦さん・産地の学校主催)

 

 

<旭化成マーケッティング室室長 近野哲氏>

今回はベンベルグに対する受講生たちの愛情を強く感じることができました。1回目と2回目で受講生の反応が違うんですよね。ベンベルグをより身近に感じてくれている、こんなに嬉しいことはないです。また、日ごろ私たちが仕事で何をしているのかを理解してくれたことがとても嬉しいです。

 

<旭化成繊維事業本部 入江桂子氏>

これまで多くの産地さんと直にやり取りしてきたなかで知り得たことを、今日は一部ではありますがお話しさせていただきました。産地の方々はいいものを沢山持っていて、それぞれの特徴をひとつひとつ紹介できたことがとても嬉しかったです。

 

 

<受講生の声>

前回はまだ掴みきれなかったんですが、今日実際に肌触りや光沢、品質の良さを感じることができて、よりキュプラへの興味が出てきました。(稲田さん・学生)

 

よりマニアックな情報が聞けてよかった。アウター使いされているキュプラをこんなにみることができる機会はないのでとても興味深かったです。(宿谷さん・フリーランス)

 

今日はベンベルグに触れることができて何よりの体験になりました。工場の特徴や生地の用途なども幅広く学ぶことができました。自分の目標に向け、ぜひ使って行きたい素材だと改めて思います。(福田さん・会社員)

 

普段プリントを扱っているので生地はよく見ますが、ベンベルグをこんなに見る機会はないので、改めて可能性のある素材だと再確認できました。(三川さん・会社員)