2020.02.28
小西麗のあれが好き 〜ピアス〜
- Category LIFESTYLE
小西麗のあれが好き〜ピアス〜
「ピアスは好きなだけ買っていい」というマイルールがある。お洋服、靴、バッグ、メガネ……どのファッションアイテムと比べても、アクセサリーは小さくてたくさん収納できる。
アクセサリーに馴染みのなかった私がピアスを開けたのは、二十歳のとき。「人生に風穴を開けたい」という願掛けだった。ドラッグストアで買ったピアッサーは、ぱしんっと乾いた音を立てて、小さな丸い金色のピアスが一瞬で耳たぶを貫いていた。いけないと思いつつ、あの日はじんじんと熱をもった耳たぶを1日中触っていた。それから6年間、私の耳にはひとつずつ小さな穴がある。
ピアスは朝、鏡の前でつけたときから、夜に外すまで、ずっと横顔を彩ってくれる。コンタクトレンズくらいの手間だ。日常使いするサイズのピアスならつけたことすら忘れてしまうくらいで、動作の邪魔にならない。小ぶりのピアスには、寝ても覚めてもつけっぱなしでいいものもある。イヤリングじゃなくてピアスが好きなのは、ズボラな自分にぴったりだと思うから。まめにつけたり外したり、なくさないようにポーチに入れて持ち歩いたり、アクセサリーを日常的に纏うのはちょっと億劫に感じてしまう人間にぴったりなのがピアスだ。
ふとした瞬間にお気に入りのきらきらを耳に飾る自分が目に入ると、すこし背筋が伸びる。そこがたとえレストルームの鏡であっても、きらきらを連れた自分にちょっと微笑んでしまう。たったひと粒のきらきらで心をしゃんとさせる力がピアスにはある。
私はピアスを買うとき、ポップアップショップや、旅先、ミュージアムショップにいることが多い。思い出と一緒にコレクションしている。写真に映るピアスは、ロンドンのモデルエージェンシーを巡る旅をしたときに買ったものだ。蚤の市みたいな場所で見つけたピアスを、誰かの思い出ごと引き継ぐのもいい。私にとって、ピアスは唯一日常的で、かつ特別なアクセサリーだ。
モデル・ライター
小西 麗
Urara Konishi
ファッションモデルを経て、編集・ライター。三度の飯とブロマンスが好き。趣味はシール集めと模様替え。共著に『何処に行っても犬に吠えられる〈ゼロ〉』(百万年書房)、モデルから企画・編集を手がけたZINE『溶けかけのアイスクリームロマンス』。コンタクトはSNSアカウント記載のメールアドレス、もしくはアトリエMIRAIへ⇩