スタイルアリーナは一般財団法人日本ファッション協会が運営しています。

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2017.11.28

コラムVol.73『いいものを持ちたい』

  • Category FASHION

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「時代の流れ」

 

 1990年代に起こったアウトドアブーム。当時、アウトドアウェアはより機能的でオシャレなものへと変化した。その後、携帯やゲーム機の登場で、人々は自然とインドア派へと移行し、アウトドアウェアの存在は薄くなっていった。しかしここ数年、ストリートではアウトドアウェアをオシャレ着として纏う傾向にある。中でも今季人気が高いのは「ボアフリース」だ。本来フリースは登山やキャンプなど、厳しい寒さに耐えるための防寒着。そのためコーディネートの主役となることは滅多になかったが、今年はメインで着こなす人が多い。

 

 

 

「量より質」

 

 ボアフリースが好まれるきっかけとして「ミニマル」というキーワードがある。この言葉には“必要最小限”という意味がある。たくさんのものを持つのではなく、最小限の数で良いものを使う、つまり“量より質”ということだ。この考え方は、もので溢れたバブル時代を知らない現在の10~20代のファッショニスタ達に深く根付いている。そして、機能的でいいものを長く使いたいという彼らの服選びの基準をフリースは満たしていた。本来はアウトドアウェアであるため、軽くて動きやすく、保温性に優れている。モコモコのボアは、存在感があるものの、ファーのように過度な主張はしない。普段着にちょうど良い、シンプルで素朴なテキスタイル。90年代、アウトドアを楽しむために改良されたボアフリースは、20年もの時を超え“いいもの”としてミニマルのしみついた若者たちに受け入れられたのだ。

 

 

 

「時を超えて」

 

 特にストリートで人気を集めたのが「パタゴニア」だ。90年代アウトドアブーム時のものがリバイバルされている。更に他のブランドやセレクトショップでもボアフリースに力を入れているのが分かる。ここ数年ボアは注目されていたが、主にジャケットの裏地や、Gジャンの襟にアクセントとして取り入れられるだけだった。それが今年フリースという形で、防寒という目的だけではなく、デザインの一つとして存在感を出してきた。形もジップアップパーカーが主流だったが、深めのVネックのものや袖にボリュームのあるものなどレパートリーが増えている。古くさかったはずのボアフリースが、懐かしさやレトロ感を出しつつも、モダンなオシャレ着に姿を変え復活を果たした。

 

 

 

 

 ミニマルの考えが根強いミニマリスト達は、フリース=防寒のためのアウトドアウェアという既成概念を乗り越えた。アイテムのもつ良さを見つめなおすことで新しい着方を見つけ出したのだ。ボアフリースは、シンプルであるがゆえに今後も進化が期待でき、目が離せないアイテムである。

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