FASHION
渋谷で交差するソウルと東京 -SHIBUYA RUNWAY × SHINSEGAE HYPER GROUND
渋谷の街では、ソウルのトレンドが自然に混ざり合い、韓国ファッションはもはやムーブメントではなく、日常に根づいた“文化”として存在感を高めている。2025年秋に実施された「SHIBUYA RUNWAY - SEOUL MIX -」は、その象徴的な出来事であった。
ランウェイでは、渋谷を拠点とするブランドによる「SHIBUYA LOOK」、新世界百貨店がキュレーションした「SEOUL LOOK」、そしてその感性が交差する「SHIBUYA × SEOUL」が立体的に提示された。渋谷の中心部が“国境を越えたランウェイ” となり、街に漂う空気そのものを変えていった瞬間である。
この動きはランウェイにとどまらない。「SHIBUYA RUNWAY」で可視化された“渋谷×ソウル”のムードは、同時にSHIBUYA109 のPOP UP「SHINSEGAE HYPER GROUND」でも表現され、渋谷全体で一つの流れとして立ち上がった。
本記事では、そのPOP UPの企画背景や手応えについても本プロジェクト担当者に話を聞き、渋谷と韓国ファッションが手を取り、ともに目指す未来について迫っていきたい。
■ SHIBUYA RUNWAY - SEOUL MIX -渋谷のど真ん中で起きた“感性の交差”

2025年秋、渋谷・文化村通りに1日限りのレッドカーペットが敷かれ、「SHIBUYA RUNWAY - SEOUL MIX -」が開催された。都市空間そのものをステージに変えるこの取り組みは、SHIBUYA FASHION WEEK の象徴的なコンテンツとなっている。ランウェイは3つのパートで構成された。
CONTENTS 1:SHIBUYA LOOK

渋谷を拠点に活動するブランドを軸に、日本のストリートファッションの“いま”が明確なスタイリングで提示された。日々ストリートで観察される渋谷らしい自由さが、ランウェイという形式によって再編集されていた点が印象的である。
CONTENTS 2:SEOUL LOOK

韓国・新世界百貨店のグローバル事業「SHINSEGAE HYPER GROUND」がキュレーションしたブランドが登場。構築的でミニマルなライン、色の抜き方、即戦力としての完成度。ソウルの“現在地”が高い密度で届けられ、会場の空気が一段と引き締まる瞬間があった。
CONTENTS 3:SHIBUYA × SEOUL

東京とソウルのブランドがミックスされたルックは、二都市の感性が同じ速度でアップデートされていることを可視化した。“国境を越えた自己表現”が渋谷のど真ん中で立ち上がる、象徴的なパートであった。
■ POP UP「SHINSEGAE HYPER GROUND」

韓国ブランドが“等身大の購買体験”としてSHIBUYA109に立ち上がった本ポップアップ。「SHIBUYA RUNWAY」で可視化された“渋谷×ソウル”のムードが、街の中でどのように立体化していったのか。その背景をより深く知るため、今回は本プロジェクトの担当者に話を聞いた。
担当者「今回のラインアップは、40〜50ほどの候補ブランドを並べ、“SHIBUYA109のお客様がリアルに手に取る姿が想像できるか”を軸に決めていきました。」
「SHIBUYA RUNWAY」が街に“渋谷×ソウル”のムードを生んだ同時期、SHIBUYA109ではPOP UP「SHINSEGAE HYPER GROUND」が展開されていた。韓国・新世界百貨店が持つネットワークから選び抜かれたブランドを、渋谷という日常の購買行動の場に立ち上げていく試みである。

ラインアップの多くは日本初出店。構築的なシルエットが特徴の〈epingler〉、ユニセックスで人気の〈HOLY IN CODE〉〈MONTSENU〉、ソウルの若い世代から高い支持を得る〈MUCENT〉、Y2Kムードを現代的に解釈した〈THREE TO EIGHTY〉。それぞれが“韓国ファッションの現在地”を体現する存在であった。
興味深かったのは、ただ陳列するのではなく、“週替わりのようにブランド構成を変えていった”という運営の柔軟さである。
初期には8階に複数ブランドを並べ、ファッションウィーク当日にはモデルが来店して盛り上げ、後半は1階へ移し、より回遊性のある場所へと導線を変えた。この“動きのある見せ方”については運営側の仕掛けがあった。
担当者「新世界百貨店のブランドは、韓国ではすでにファンがいる一方で、日本では初めて触れる方も多い。だからこそ“飽きない構成”や“新鮮な出会い”を常につくりたかったんです。」
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実際、〈MUCENT〉や〈LETTER FROM MOON〉などは特に人気が高く、オンラインで存在を知っていた人々が「やっと実物を見られる」と足を運んだのだという。一方で、初出店ブランドである〈epingler〉は日本のイラストレーターとのコラボ企画を実施し、サイン会によって新しいファン層をつかんでいた。
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また、展示だけでなく、韓国で流行する“レシート写真機”を設置したり、SNS投稿でギフトがもらえる仕掛けを用意したりと、体験型の要素が随所に散りばめられていた。SHIBUYA109の店内には、韓国のカフェやショップで見られる空気感が自然に流れ込み、若い世代だけでなく母娘で買い物に訪れる姿も見られた。
担当者の言葉を借りれば、今回のPOP UPは「韓国から日本へブランドを届けるだけでなく、日本のマーケットにどうなじむかを確かめる実験でもあった」だったと言う。
SHIBUYA109という“等身大の購買の場”でリアルな反応を見ることは、新世界百貨店側にとっても、渋谷という都市にとっても大きな意味を持つ取り組みであったといえる。
■ 渋谷とソウルが“並走する時代”へ

©SHIBUYA109ENTERTAINMENT
今回の取材を通じて強く感じたのは、渋谷とソウルの関係性が「流行の往来」から「文化の並走」へと移行しているということである。
スタイルアリーナでは日々、渋谷の街でスナップを撮り続けている。Z世代のスタイルの変化を間近で観察していると、韓国ファッションはすでに“外から入ってくるトレンド”ではなく、彼らの日常の選択肢の中に自然に溶け込んだスタンダードになっている。
今回の「SHIBUYA RUNWAY」と POP UPは、その実態を都市レベルで可視化した出来事だったといえる。担当者の声は、その確信をさらに強めてくれた。
担当者「韓国からブランドを届けるだけでなく、日本のマーケットにどうなじむか。POP UPはその“実験の場”でもあった。今後はアパレルに限らず、エンタメ・フード・コスメなど、日韓でどこまで広げていけるかを一緒に考えていきたい。」
これらの言葉は、“韓国ブランドを輸入する”という一方向の構図ではなく、渋谷を起点に日韓が双方向で文化をつくりあう未来 を示している。実際、今回のPOP UPでは、実物を見たいZ世代はもちろん、母娘で訪れる姿も見られた。世代を跨いで楽しめる韓国ブランドは、すでに渋谷の生活動線の中に入っている。
渋谷ランウェイで提示された“感性のミックス”。SHIBUYA109のPOP UPで立ち上がった“等身大の体験”。そしてストリートで日々進化し続けるZ世代のリアル。
これらはすべてバラバラではなく、ひとつの大きな流れとして渋谷のカルチャーを更新している。
今回のレポートは、その始まりを捉えたに過ぎない。渋谷とソウルは今後、さらに密度を増しながら交差していくだろう。次の季節、このタッグがどのような形で街に現れるのか。引き続き注目していきたい。





